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自治体(行政)SDGsはビジネスにどう影響するのか

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 SDGs推進のフェーズがビジネスに移行しつつある中で、各企業の取組み事例が増えてくることが、その地域の活性化に繋がることは確実です。2015年のSDGs採択直後を振り返ると、国内各地の自治体(行政)でのSDGs推進の取組みに温度差が生じており、その差が現在の地域におけるビジネス領域での展開にも影響を与えていると見ることができます。

 今後は自治体が中小企業のビジネスをSDGs視点でも後押しできることが求められる中で、各企業が「うちの市は、SDGsどうしてる?」を知ることは大切な情報となります。富山県内の自治体を事例に、自治体(行政)×中小企業のSDGs展開を考えていきましょう。

自治体とSDGsの関係
 SDGs=環境政策の位置づけとなっている自治体が多く見られます。これは、日本政府が地方自治体へとSDGs普及を働きかけてきたプロセスに起因するものです。
 日本ではSDGs採択前から「持続可能な社会を実現する」ことを目指して、環境モデル都市の取組みをスタートさせ、その後に「地方創生」の大号令とともに、地方都市が生き残るための施策を模索してきました。ざっと流れを整理すると、このような流れです。

時期

日本の動き

関連の動き

2008年

環境モデル都市の選定開始

2010年

環境未来都市構想が閣議決定

2011年

環境未来都市の選定開始

2014年9月

地方創生を閣議決定

担当大臣に石破茂氏が就任

2014年5月

「消滅可能性都市」増田レポート

2015年9月

国連で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs含む)が採択

2016年5月

総理大臣を本部長とする「SDGs推進本部」を設置

2018年

SDGs未来都市の選定開始

 2008年からの環境モデル都市は、低炭素社会の実現を目指して温室効果ガス削減などに取り組む自治体を選出しました。その後、少子高齢化の深刻化にともない、2010年には日本全体を持続可能な社会にすべく環境未来都市へと発展しています。

 国内の自治体に衝撃が走ったのは2014年5月、前岩手県知事・元総務大臣の増田寛也さんによる「増田レポート」(日本創成会議・人口減少問題検討分科会「成長を続ける21世紀のために『ストップ少子化・地方元気戦略』2014年5月8日」)の発表でした。
 大都市への人口移動が収束しない場合、2040年に若年女性(20~39歳)が50%以上減少(2010年比)する896自治体を「消滅可能性都市」とし、 そのうち2040年に人口が1万人を切る自治体523は「消滅可能性が高い」とし、その自治体名がわかる一覧表を示したことで、人口減少社会の解決にタイムリミットが設けられたような実感(錯覚?)が、全国の自治体に広がりました。

 このような状況の中、期せずして2015年に国連では「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、具体的な目標設定としてSDGsが設けられました。増田レポートの衝撃もあり、国は2016年に安倍総理を本部長に「SDGs推進本部」を設置し、2018年には地方自治体での動きを加速させるため「SDGs未来都市」の選定を開始しました。

ここまでの過程で分かることは、"環境を守るため"に「環境モデル都市」を設置し、"日本を持続可能にするため"に「環境未来都市」を設置し、"地方都市を守る"ために「SDGs未来都市」を設置してきたということになるため、地方創生からSDGsへと繋がったことで、「SDGs未来都市」の選定には環境配慮の色が強くなっているということです。

富山県内自治体におけるSDGs未来都市認定状況

 視点を自治体にシフトさせてみましょう。富山県内でSDGs未来都市に選定されているのは、富山県、富山市、南砺市の3つです。

【富山市のケース】
 2018年の第一期で選定された富山市は、環境未来都市からの流れで「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」の両方に選定されています。
 富山市議会の議事録を見ると、2017年3月に初めてSDGsに関する答弁があり、同年9月議会では森雅志市長が「本市は、本格的な人口減少社会の到来を見据え、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりをはじめ、環境モデル都市や環境未来都市としての取組みなど、将来市民に責任の持てる持続可能なまちづくりを政策の基本に据え、さまざまな施策を推進してきた」と言及しています。
 さらに2018年3月には「国においては、「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2017改訂版)」の中で、地方自治体によるSDGs達成に向けた取組みの必要性がうたわれたところであります。また、「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」では、SDGsの実施を促進するためには、世界のロールモデルとなることを目指し、国内実施、国際協力の両面において環境未来都市及び環境モデル都市の先進的な取組みを活用する旨が定められていることから、地方自治体におけるSDGsを普及展開していく上で、国から環境未来都市及び環境モデル都市の選定を受けている本市が果たす役割は極めて大きいものがあると認識しております」と、SDGs未来都市を示唆する答弁がありました。同年の6月15日には、富山市がSDGs未来都市に選定されたことが発表されています。

【南砺市のケース】
 2019年の第二期でSDGs未来都市に選定された富山県南砺市では、2011年から関連する取組みが始まっています。2011年3月の東日本大震災からの学びを活かし、人と自然の関係性を問い直すための「ローカルサミットin南砺2012」開催をきっかけに、2013年3月に「南砺市エコビレッジ構想」を策定しています。
 「環境保全・エネルギー」「農林漁業」「健康・医療・介護・福祉」「教育・次世代育成」の 4 つの分野が相互に連携・連動しながら地域の自立と循環を図っていくことを目的として、小さな循環による地域デザインを確立しています。
 この動きがSDGsに合致することは容易に理解できることが、2018年12月の南砺市議会で田中幹夫市長が「私も今回、実を言いますと、この「SDGs未来都市」というものに、今までやってきた我々の事業が非常にマッチしているところが多いということで、申請を出したかったんですが、準備不足で、昨年はこれを見送ったという経緯がございます。(中略)申請につきましては、今までもやってきましたエコビレッジ構想、こういったものを中心に、SDGsの定めた17の開発目標とまずはつなぎ合わせる。そして、一人でも多くの市民の皆様に関心を持っていただくことに重点を置いたアクションプランを策定していかなければなりません。」と答弁していることからも分かります。
 SDGs未来都市の選定テーマは、「南砺版エコビレッジ事業」の更なる深化~域内外へのブランディング強化と南砺版地域循環共生圏の実装~です。

【富山県のケース】
 2019年の第二期で、都道府県として北海道、神奈川県、長野県、広島県に次いで5番目の選定となった富山県は、当初、SDGs未来都市としての取組みには後ろ向きな姿勢でした。県議会の議事録を確認すると、2018年11月に平木柳太郎議員(私)から、富山市のSDGs未来都市選定を受けて、県としても手を挙げなかった理由を問われ、「県では以前からこのSDGsという言葉がない時代から、SDGsの趣旨に沿ったさまざまな施策に取り組んできております。」と答弁し、全国初のレジ袋の無償配布廃止や、G7環境大臣会合で富山物質循環フレームワークが評価されたことなどを挙げ、環境政策を中心に実績は十分にあることを強調しています。
 その後、方針を転換して2019年7月にSDGs未来都市に選定、同年8月には富山県SDGs未来都市計画を策定し、SDGs未来都市の選定テーマは、環日本海地域をリードする「環境・エネルギー先端県とやま」を推進しています。

 富山県内では富山市、南砺市、富山県に続くSDGs未来都市選定はありませんが、予算案などでSDGsに対応していく動きは多く見られます。また、地方創生SDGs官民連携プラットフォームには、高岡市、魚津市、氷見市、砺波市、小矢部市、射水市も参画しており、県内の市町村がパートナーシップを発揮していくことを期待します。

◎リンク集

関連ページ:富山市 SDGs未来都市選定 https://sdgs.city.toyama.lg.jp/#aboutCity

関連ページ:富山県 SDGs未来都市選定 https://www.pref.toyama.jp/100202/kurashi/chihousousei/chihousousei/sdgs/kj00020623.html

関連ページ:南砺市 SDGs未来都市選定 https://www.city.nanto.toyama.jp/cms-sypher/www/info/detail.jsp?id=21247

関連ページ:地方創生SDGs官民連携プラットフォーム https://future-city.go.jp/platform/member/

関連YouTube(SDGsジャーナル)
・世界に誇れるコンパクトシティ戦略|富山県富山市【SDGs未来都市】
https://www.youtube.com/watch?v=B7NS63I3uqI

・美しい山と海|富山県【SDGs未来都市】
https://www.youtube.com/watch?v=PpD_rDhov_8

SDGs経営を推進するために自治体とパートナーシップが期待される動き
 今後、自治体の動きをビジネスに繋げていくためには、相互理解を深めていかなければなりません。あらゆるビジネスにおいてSDGsは適用されるものであり、また自治体は中小企業がビジネスにSDGs経営を取り入れていくことを邪魔せずに後押しする必要があります。
 富山県では「富山県SDGs宣言」をプラットフォームとして設置し、県内企業や団体に意識を高めてもらうことと、宣言した事業者の間でパートナーシップが促進されることを狙っています。

◎ 富山県SDGs宣言 https://www.sdgs-toyama.jp/about/
 この富山県SDGs宣言に呼応して、富山経済同友会では啓発活動を進めています。会員企業へのアンケートでは、SDGsに取組み始めている企業が70%に上るようです。(回答した175/400社中)

 SDGs経営を進めるために、地方の金融機関との連携は欠かせない要素となります。金融庁は2021年6月に「サステナブルファイナンス有識者会議報告書」を公表し、サステナブルファイナンスの推進について、EU等で策定に向けた動きのあるタクソノミー(サステナブルな経済活動を分類する基準)に触れて、「環境改善効果が伴わないにもかかわらず、あたかも環境に配慮しているかのように見せかける、いわゆるグリーンウォッシュやSDGsウォッシュを防止し、真にサステナビリティ目標に資する資金フローを実現する」ために、国際的な議論に日本も参画することが望ましいとしています。
 国の動きとしては、地域の中小企業と金融機関をつなぐ「地方創生SDGs金融」を進めていますが、経営サイドと金融サイドの両側でSDGsに対する感度を高めていくことが必須条件となりそうです。

◎地方創生SDGs金融
 地方創生SDGsに取り組む地域事業者と、その取組に対して積極的に支援を行う地域金融機関等のステークホルダーを、地方公共団体がつなぐことにより、地域における資金の還流と再投資を生み出す「地方創生SDGs金融」を通じた自律的好循環の形成を目指し、取組を推進。地方創生SDGsに取り組む地域事業者等の見える化や、地方公共団体及び金融機関等の連携による取組を支援。
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kankyo/kaigi/pdf/sdgs_finance.pdf

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